今回ご紹介する『グリーンブック』は、第91回アカデミー賞で作品賞に輝いた珠玉のヒューマンドラマ。相反する二人の男が旅を通じて心を通わせていく姿は、時代を超えて私たちの胸を打ちます。
差別の残る激動の時代を背景にしながらも、ユーモアと温かい視点で描かれた本作。なぜこれほど多くの人々に愛され続けるのか、お休みの日のひとときに、ぜひじっくりと味わっていただきたい名作です。
『グリーンブック』作品データ
・日本公開日:2019年3月1日
・配給会社:ギャガ
・監督・脚本:監督 ピーター・ファレリー / 脚本 ニック・バレロンガ、ブライアン・カーリー、ピーター・ファレリー
・主なキャスト:
トニー・“リップ”・バレロンガ役(ヴィゴ・モーテンセン)
ドクター・ドナルド・シャーリー役(マハーシャラ・アリ)
ドロレス(トニーの妻)役(リンダ・カーデリーニ)
・上映時間:130分
・受賞歴:
第91回アカデミー賞 作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞
第76回ゴールデングローブ賞 最多3部門受賞(作品賞、助演男優賞、脚本賞)
・原作着想:本作の脚本を手がけたニック・バレロンガの実の父親であるトニー・リップ(トニー・バレロンガ)と、天才ピアニストのドン・シャーリーが1962年に行った南部ツアーの実話をベースにしています。
・印象的な地域・場所:出発地であるニューヨークの格式高い「カーネギーホール」、ツアーの目的地である「アメリカ深南部(ディープサウス)」の各都市、そして黒人専用の旅行案内書『グリーンブック』に記載されたモーテルやバーなど。
・主な視聴可能サービス:U-NEXT(見放題)、Amazonプライム・ビデオ(見放題)、Hulu(見放題)、FOD(レンタル)など(2026年現在)
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
舞台は1962年のアメリカ。ニューヨークの有名ナイトクラブで用心棒を務めるイタリア系のトニー・リップは、店が改装のため休業になり、しばらくの間職を失ってしまいます。そんな彼のもとに、ある風変わりな仕事の依頼が舞い込みます。
雇い主は、ホワイトハウスでも演奏経験がある天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー。彼はあえて、人種差別が色濃く残るアメリカ南部へのコンサートツアーを計画しており、その旅の用心棒兼運転手としてトニーをスカウトしたのです。
ガサツで無学ながらも家族思いで腕っぷしの強いトニーと、気高く教養にあふれるもののどこか孤独を抱えるシャーリー。育ちも性格もまったく正反対の二人は、当時発刊されていた黒人専用の旅行ガイドブック『グリーンブック』を手に、1台の車で南部へと旅立ちます。各地で直面する困難を乗り越えながら、彼らの旅はどのような結末を迎えるのでしょうか。
感想・レビュー おすすめ度:A(とても面白い)
この映画が素晴らしいのは、社会的な重いテーマを扱いながらも、決して説教くさくならず、極上のエンターテインメントとして昇華されている点です。クスッと笑えるユーモアと、じわりと胸が熱くなるドラマのバランスが絶妙で、観終わった後に心地よい余韻が残ります。
特に印象的なのは、二人の関係性の変化です。最初はビジネスライクで、どこか互いに壁を感じていたトニーとシャーリーが、車中での他愛のない会話や、フライドチキンを一緒に食べるような小さな出来事を通じて、少しずつ互いを認め合っていきます。
トニーが妻へ書く手紙をシャーリーが添削するシーンは、二人のチャーミングな人柄が出ていて微笑ましく、お気に入りの場面の一つになりました。
また、シャーリーがピアノに向き合う瞬間の圧倒的な美しさと、彼が抱える「どこにも属せない孤独」を演じきったマハーシャラ・アリの演技には深く惹きつけられます。それを受け止めるヴィゴ・モーテンセンの人間味あふれるタフなキャラクターも非常に魅力的で、この二人の掛け合いだからこそ、若者から大人まで幅広い世代の心にまっすぐ届く作品になっていると感じます。
違いを認め合い、歩み寄ることの大切さを、スマートかつ温かい視点で教えてくれる名作です。まだご覧になっていない方には、自信を持っておすすめします。

