【Audible書評】本屋大賞『カフネ』を聴いて感じた、人と人との優しいつながり

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話題のベストセラー、阿部暁子さんの『カフネ』をAmazonのオーディオブックサービス Audible で視聴しました。2025年の本屋大賞を受賞した本作は、大切な人の死やそれぞれの生きづらさを抱えた登場人物たちが、日々の暮らしを見つめ直し、他者との関わりを通じて傷を癒やしていく姿を丁寧に描いた再生の物語です。今回は、耳で楽しむ読書体験も交えながら、作品の魅力をご紹介します。

2025年本屋大賞受賞作、阿部暁子の『カフネ』。弟の急死を機に出会った二人の女性が、家事代行と温かな手料理を通じて孤独な人々の心を解きほぐしていく物語です。日常の尊さと、静かな救いに出会える大人の名作です。
目次

カフネ 作品データ

作家: 阿部暁子
発売日: 2024年5月22日(単行本)
出版社: 講談社
受賞歴: 2025年 第22回本屋大賞 受賞、第8回未来屋小説大賞 第1位、第1回「あの本、読みました?」大賞 第1位
初出: 『小説現代』2024年4月号(掲載作を加筆・改稿して単行本化)
構成・ボリューム: 全1巻(単行本:304ページ / Audible版再生時間:10時間31分)
キーワード: 家事代行、心の再生、家族の喪失、お節介、他者との距離感、シスターフッド
本に出てくる印象的な地域・場所: 東京都八王子市(浅川周辺など、実在する街の生活感がリアルに描かれています)
おすすめの読者: 心に小さなしこりや生きづらさを抱えている方、温かい人間ドラマが好きな方、これからの生き方や他者との距離感を見つめ直したい幅広い世代の方へ
電子書籍サービス:Kindle、BookLive、honto など(2026年現在)
オーディオブックサービス: Amazon Audible (ナレーター:岸本百恵)(2026年現在)

簡単なあらすじ(ネタバレなし)

法務局に勤める野宮薫子は、離婚を経験し、荒んだ部屋で無気力な生活を送っていました。そんな彼女を追い詰めるように、溺愛していた29歳の弟・春彦が急死してしまいます。

弟が遺した遺言書をきっかけに、薫子は弟の元恋人である小野寺せつなと出会います。無愛想ながらも卓越した家事・料理のスキルを持つせつなに、薫子は自分の手料理を振る舞われ、久しぶりに心と身体がほぐれていくのを感じます。

せつなは家事代行サービス会社『カフネ』で働いており、薫子はその仕事を手伝うことに。様々な事情や悩みを抱える家庭を訪問し、暮らしに寄り添う活動を通じて、人々の閉ざされた心と自分自身の傷を少しずつ救っていくことになります。

「カフネ」を聴いて

本作に対する私個人のおすすめ度は、星4つの「B(面白い)」です。

タイトルの「カフネ」とは、ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」を意味するそうです。その言葉通り、不器用な登場人物たちが他者の傷にそっと触れ、お互いの存在によって心を健やかにしていくプロセスが心地よい作品でした。

今回は耳で聴く「Audible」での体験でしたが、ナレーターの岸本百恵さんの朗読が本当に素晴らしかったです。主人公・薫子の心の動揺や、せつなの淡々としつつも芯のある声が見事に表現されており、まるで登場人物たちがすぐそばにいるかのような深い没入感がありました。

物語の醍醐味は、二人の関係性もさることながら、家事代行として訪れる一軒一軒の家庭で起きる小さな変化です。現代社会は「他人に干渉しすぎない」ことが美徳とされがちですが、本作で描かれるのは、あえて一歩踏み込む「お節介」の重要性。苦しい時ほど、人は自分からSOSを出せなくなるものです。そこに差し出される手料理や部屋の片付けといった「小さな優しさ」が、凝り固まった家庭の空気をじんわりと溶かしていく様子には、大人の読者としても考えさせられるものがありました。

大博打のような劇的な展開があるわけではありません。しかし、日々の丁寧な暮らしや、他者と関わり合うことの大切さこそが、傷ついた人間を再生させるのだというメッセージは、世代を問わず胸に響くはずです。

派手さはないものの、読後に「明日からもう少しだけ優しく、前を向いて生きよう」と思わせてくれる、確かな温もりのある良作です。ちょっと心が疲れたときの処方箋として、あるいは通勤や家事の合間にぜひ聴いてみてください。

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