2021年の本屋大賞を受賞した町田そのこさんのベストセラー小説『52ヘルツのクジラたち』をaudibleで聴きました。杉咲花さん主演で映画化されましたヒューマンドラマの傑作です。社会の片隅で生きる人々の孤独と、そこからの救いを描いた深く切ない物語でした。まだ読まれていない方はぜひaudibleでぜひ視聴してみてください。
『52ヘルツのクジラたち』作品データ
作家:町田そのこ
発売日:2020年4月21日(単行本) / 2023年5月25日(文庫本)
出版社:中央公論新社
受賞歴:2021年本屋大賞 第1位、第4回未来屋小説大賞、王様のブランチBOOK大賞2020
初出:書き下ろし単行本として刊行(町田そのこ初の長編小説)
構成・ボリューム:単行本 264ページ(四六判) / 文庫本 312ページ / 音声完全版 約9時間48分
キーワード:児童虐待、家族からの搾取、孤独、再生、魂の叫び、絆
本に出てくる印象的な地域・場所:大分県の海辺の町(主人公が移り住む古い一軒家)
おすすめの読者:心に寂しさを抱えている方、人間関係に疲れて温かい絆に触れたい方、世代を問わず質の高い現代小説を読みたい方
電子書籍サービス:Kindle、ebookjapan、コミックシーモア、楽天Koboなどで広く配信中(2026年現在)
音声配信サービス:Audibleにて配信中(完全版ナレーター:安田愛実)(2026年現在)
簡単なあらすじ
タイトルにある「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラには聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一番孤独なクジラのことです。
主人公の貴瑚(きこ)は、自分の人生を家族に搾取され、心身ともに深い傷を負った女性です。彼女はすべての人間関係を断ち切り、大分県の静かな海辺の町へと移り住みます。そこで彼女が出会ったのは、母親から激しい虐待を受け、言葉を失い「ムシ」と呼ばれていた一人の少年でした。
誰にも届かない声を上げ続ける二人が出会ったとき、止まっていたそれぞれの時間が静かに動き始めます。
感想・レビュー おすすめ度:A(とても面白い)
ページをめくる、あるいは声を追うごとに、胸が締め付けられるような痛みを覚える作品です。児童虐待や家族の問題など、描かれているテーマは非常に重く、目を背けたくなるような現実が続きます。しかし、決して暗いだけの物語ではありません。絶望の淵に立たされた人間が、他者との関わりの中で少しずつ光を見出していくプロセスが丁寧に、そして力強く描かれています。
今回の体験で特に素晴らしいと感じたのは、物語が持つ「言葉の力」です。音声を通じて紡がれる言葉のひとつひとつが、過剰な演出なしで淡々と、それでいて確かな体温を持って心に染み込んできました。登場人物たちの苦しみや祈りが直接耳元から伝わり、気がつけば物語の世界へ深く引き込まれていました。
登場する人々はみな、どこか不器用で、傷だらけです。それでも誰かの「届かない声」を聴こうと必死にもがく姿には、世代を超えて共感できる普遍的な美しさがあります。読み終えた(聴き終えた)あとには、悲しみの先にある静かな感動と、どこか救われたような温かい余韻が残りました。
日々の生活の中でどこか孤独を感じている方や、誰にも言えない思いを抱えている方にこそ、ぜひ触れてほしい一冊です。人間の持つ優しさと強さを信じさせてくれる、文句なしの傑作だと思います。

